タクシー運転手すぐ辞めた理由

私自身はタクシー運転手を10年間やっておりましたが、タクシー運転手になってすぐ辞めた人と言うのも見てきました。そんな方々の理由について語りたいと思います。

始めに結論を言うと、辞める理由は色々ありますが、これだと言うより複合的に辛い経験にあい給料が見合ってないと言う感じです。

実際に辞める人は多いのか?

2023年の東京ハイヤー・タクシー協会の報告によれば、新卒入社に限った話ではありますが離職率は約10%との事です。これは他の業種の平均である約30%と比較しても、比較的低い数値です。

参照:東京ハイヤー・タクシー協会資料、東京のタクシーp.22(https://www.taxi-tokyo.or.jp/assets/pdf/datalibrary/hakusyo2023all.pdf[=])

辞めない理由は同世代に比べ平均収入が高い

令和4(2022)年平均給与(月給)タクシー業界:355,000円
東京都新卒学生平均初任給:239,200円 新卒学生平均初任給:228,500円
資料:厚生労働省・賃金構造基本統計調査(令和4年)


この調べればすぐ出る情報の注意点ですが。
これは東京のしかも大手タクシー会社の話ですので軽い参考程度でしょう。

中途入社や業界全体に離職率の信頼出来る資料は見つかりませんでした、ただ大まかにこの業界で言われている全体の離職率だと20%前後ぐらいと言うのが多かったです。私の経験の肌間隔でもそんなもんだと思います。少なくとも離職率の高いサービス業よりは良いと思います。


タクシー運転手をすぐ辞めた理由。

ネットで見ると以下のような理由があげられているのではないでしょうか?

・収入の不規則性: 給与が安定せず、収入に波があります。
・身体と精神への負担: 長時間の勤務が心身にストレスを与えます。
・困難な顧客対応: 時には扱いにくい乗客と向き合う必要があります。
・社会的な見方: タクシードライバーを「誰でもできる仕事」と偏見を持つ人もいる。
・事故の可能性: 交通事故のリスクに常にさらされています。
・不規則な生活スタイル: 生活リズムが不規則で健康に影響することも。


しかし、これだって言う原因で辞めるのではなく、複合的に不満がたまり辞める人がほとんどのように感じます。

例えば、こんなストーリーです。


タクシー運転手の仕事に飛び込んだ時、彼は意気揚々としていた。新鮮な期待とやる気で満ち溢れ、本気で働けば魅力的な収入を得られると思い、全力で頑張り、疲れを知らずに残業も重ねた。


しかし初めの月の給与明細を目の当たりにした時、現実の厳しさが彼に直撃した。ある程度の低収入は予想していたものの、実際に目にする20万円をわずかに超える金額は、彼が当初期待していたものとは大きく異なっていた。

ある晩、彼は派手な服装の男性客を乗せた。途中で道を間違え、客に怒鳴られるというハプニングがあり、最終的には料金を全額請求できず、自腹を切って差額を支払った。


その日の帰り道、疲れとストレスからか、うっかり電信柱に軽くぶつけてしまった。会社に戻ると、所長に怒られ事故の報告書を書かされた。


本来なら仕事が終われば1秒でも早く帰りたいのに、帰れない、しかも歩合給のタクシードライバーはこの時間は無給だ、さらに事故をしたペナルティで今日の稼ぎの半分ぐらいの給料を減らされる説明も受けた。


自分が悪いと思いながらも、どこか腑に落ちない気持ちや不満やストレスでいっぱいだった。

翌日、彼は無意識にネット求人を見ていた。他の仕事の条件を見ていると、現実を知った彼にはどれもタクシードライバーよりも良さそうに思えた。


彼は部屋の窓から外をぼんやりと眺めながら、タクシー運転手としての日々を振り返った。



残業の日々、疲れ切った深夜の帰り道、客の怒鳴り声、そして無情にも彼を打ちのめした電信柱への接触からの収入に繋がらない事故処理の仕事。

そして極めつけは,これだけの体験をして月収20万円をわずかに超える給料と言う事。


「もう十分だ」と彼は小さく呟いた。彼の心は、もはや過酷な現実に耐える力を失っていた。彼は深くため息をつき、目を閉じた。その瞬間、彼の心は決断を下していた。彼は自分自身に、そして過酷な現実に対して、もう一つの道を歩む勇気を。

次の出勤日、彼は晴れ晴れとした顔で所長のオフィスに入った。手には、彼の新たな人生の始まりを告げる辞表が握られていた。彼は所長に向かって深く一礼し、辞表を提出した。彼の目は不安ではなく、新たな未来への希望に満ちていた。